コラム

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2018年1月3日 心臓病とストレスの関係⑥夢が病気のサインになる?

これまで、心臓病と性格・ストレスという観点から考えてきました。

軍医総監でもあった森鴎外は『夢』という随筆で、海外の研究のひとつとして「病人の夢」について触れ、「心臓病者の夢は短くして醒る時には瀕死の苦あり」と検究(ママ)されていると紹介しています。その他、現在で言ううつ病になると、悲しい夢を見、貧血の若年女性は心臓の鼓動をよく聴くために、波や風の音、ウグイスの声が夢に出てくるのだそうです。また、夢がきっかけで病気になるというメカニズムもあると紹介しており、肝膿瘍(肝臓に膿が溜まる)の前には、右の腹に刀を刺された夢をたびたび見るのだそうで、腸チフスにかかる前には、お腹に鷲が舞い降りる夢を見るのだそうです。

気懸かりなことがあると、それに似たテーマの夢を見ることがあります。
大きな試験を控えているとき、試験の日に電車に乗り遅れて困っている夢を見て、冷や汗とともに目が覚めた、なんていう経験をされたことのある方もいるでしょう。生活状況に関係して見る夢はむしろ普通です。たいていは、大変な思いをしているときにちょっと嫌な夢を見たりしますが、幸せな夢を見て、それがいわゆる正夢や予知夢という類のものであることもあるようです。心理学の領域では、夢は無意識と関連されて考えられることが多いようですが、夢をどう扱うかは心理学の流派によって異なります。占いの世界のように、夢の持つ意味については心理学の領域ではあまり考えません。過去の影響を多く受けていると考える立場もあれば、未来を予言しているとする立場もあります。

また当事者ばかりでなく、カウンセリングしている治療者がその患者さんに関係することで夢を見ることもあります。うつ病から回復するとき、夢の方が先に良くなっていくとは、精神医学の領域でしばしば指摘されることです。古来、私たちは夢をサインや予兆とみなす「信仰」が、夢を扱う思考過程のひとつとしてあり、それはきっと、そのことに関心をもち、悩んだ過去を踏まえたからこそ、サインや予兆として記憶や記録に留められ受け継がれていたのでしょう。その意味で、夢は未来と過去のいずれにも関係し、その時々の条件によってどちらかの比重が多くなったり少なくなったりして、より未来志向なのか、より過去に影響を受けているのか、印象づけられるのかもしれません。

現代の私たちの感覚では、夢の内容と心臓病について、特定の夢を見たり、予兆として夢のお知らせがあったりするとは考えにくいものです。とはいえストレスという点で考えれば、夢見がちょっとしたサインにはなるかもしれません。はっとして起きたり、冷や汗をかいたり、焦りが伴うような夢をよくみたりするようであれば、生活上で少し気懸かりなことを抱えているのかもしれません。その場合、生活上でのストレスについて考えることや、いかに生活の中の(気づきにくい)無理を(含めて)見直せるかが大切なテーマになってくるのでしょう。