コラム

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2017年10月1日 おさえておきたい「心臓の構造と働き」

血液は絶えず全身をめぐり、身体をつくっている一つひとつの細胞に、酸素や栄養分を供給するとともに、細胞から不要物を回収しています。この血液循環をスムーズに行うため、「ポンプ」の役割を果たしているのが心臓です。

心臓は、にぎりこぶしくらいの大きさで、左下(下図では向かって右下)が少し突き出たような、卵形に近い形をしています。こちらのコラムでも話した通り、胸の中央に位置していますが、突き出た部分はやや左前方になります。重さは成人で200~250gほどです。

心臓は心筋という筋肉でできており、その表面は心膜という、弾力のある膜で覆われています。心筋は、手足などの身体を動かす筋肉である骨格筋の構造をしていながら、胃腸などの内臓の筋肉である平滑筋と同じく、自分の意思では動かせないという特殊な筋肉です。

心臓の内部は、中隔という壁で左右の部屋に分かれ、動脈と静脈の血が混ざらないようになっています。左右に分かれた部屋はさらに上下にも分かれており、上を「心房」、下を「心室」といいます。つまり心臓は、大きく左心房、左心室、右心房、右心室の4つの部屋に分かれているといえます。

このうち右心房には、全身をめぐってきた血液が静脈にのって戻ってきます。上半身からは上大静脈、下半身からは下大静脈が右心房につながっており、血液が注ぎ込まれます。この血液は右心室に入り、肺動脈によって肺へと送り込まれます。

肺へ達した血液は、ここで酸素を得て今度は肺静脈を通って左心房に入り、左心室へ移ります。そして、大動脈にのって全身へと送り出されていくのです。

心臓内では、血液は右心房→右心室→左心房→左心室の順に、一方通行で流れています。逆流を防ぐために、上図のように各心房と心室の間、動脈の出口等に「弁」があります。この一連の循環を可能にしているのが、心臓のポンプ機能です。心筋が規則的に収縮と弛緩を繰り返すことでポンプの役割を果たしています。そして、この動きを拍動といいます。

心臓の拍動のしくみ

心臓は1分間に60~80回の拍動を行っています。心房が収縮すると心室へと血液が押し出され、心室が収縮すると、肺や全身へ心臓から血液が送り出されるのです。1回の収縮で大動脈と肺動脈に送り出される血液の量は、それぞれ60~100ml 。1日に約7000ℓ分の血液を送り出しているという計算になります。心臓を出た血液は、約1分で全身をひとめぐりして再び心臓に戻ってきます。

拍動は、心筋の「刺激伝導系」と呼ばれる電気信号による運動指令で起こります。まず、右心房と上大静脈の境界にある洞房結節という部分から電気信号が発せられ、その刺激が右心房と右心室の境界にある房室結節に届き、心臓全体に信号が伝わります。収縮はこのようにして起こりますが、一方、心臓は自らを拡張することはできません。心臓に戻ってきた血液の圧力によって、自然にふくらむようになっています。

なお、運動時や興奮、緊張したときなどは、自律神経の影響を受け、拍動数が増えます。全力で走った後や人前であがったときにドキドキするのはこのためです。送り出される血液の量も増えるので、顔が赤くなったり、体温が上がり汗をかきやすくなったりします。

以上が、心臓の基本的な構造とはたらきです。
生命の中枢を担う臓器ですから、ぜひ覚えておいてほしいと思います。