コラム

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2017年9月13日 タバコは百害あって一利なし。タバコと動脈硬化の関係

タバコの煙には、約4000種類にものぼる化学物質が含まれているといわれています。これらの多くは血流にのって全身に運ばれるため、その経路となる血管も悪影響を受けます。

動脈硬化はその代表格といっていいでしょう。
喫煙すると脂質代謝に異常が生じ、動脈硬化を防ぐために働くHDLコレステロールが減少する一方、LDLコレステロールなどの血液中の脂質に変性が起こり、プラークがつくられやすくなると考えられています。

また、タバコのニコチンには強力な血管収縮作用があるため血圧を上昇させますし、同じくタバコに含まれる一酸化炭素は、血管の内壁を傷つけるのに加え、血栓をつくりやすくすることがわかっています。

近年では、喫煙がインスリン抵抗性を高めたり、すい臓からのインスリンの分泌機能を低下させたりして、糖代謝にも障害をもたらすことが指摘されています。

日本人を対象にした研究で、喫煙者と非喫煙者を10年間追跡調査したところ、喫煙者が虚血性心疾患で亡くなるリスクは、非喫煙者の2.5~3倍強にのぼるという報告があります。

仮に、メタボではなく、高血圧や高血糖、脂質異常症がない人であっても、喫煙習慣があるだけで、動脈硬化のハイリスク群になってしまうのです。まして、メタボやそれにともなう生活習慣病があった上に、喫煙をしていれば、それは自ら命を縮めてしまう行為といっても過言ではありません。

喫煙の害は、吸っている本人に及ぶだけではすみません。

タバコを吸わない周囲の人も、受動喫煙といって間接的に煙を吸い込むことで、タバコの有害物質が体内に取り込まれ、動脈硬化をはじめさまざまな病気のリスクを高めることがわかっています。受動喫煙をしている人はそうでない人に比べ、虚血性心疾患にかかるリスクが1.25~1.3倍(25~30%の上昇)にもなる、という研究報告もあります。

こうしたタバコの害は、年々広く知られるようになり、また、タバコの値上げも続いていることから、禁煙治療を希望される人が増えています。当院でも禁煙外来を開設しており、心理的なサポートもしながら、無理なく禁煙が継続できるよう治療にあたっています。

喫煙者本人が吸い込む煙を主流煙、火のついたタバコから立ち上る煙を副流煙といいますが、主流煙よりも副流煙のほうが、有害物質の量が多いといわれています。現在、国内で販売されているタバコのパッケージには、法律によりニコチンとタールの量の記載が義務づけられていますが、実際に、主流煙と副流煙それぞれに含まれる量を測定したところ、主流煙はほぼパッケージの記載通りの量だったのに対し、副流煙ではニコチンが約4倍、タールが約2倍であったという結果報告もあります。

なお、タールは発がん性物質としても知られています。動脈硬化だけでなくがん予防においても、禁煙が重要であることは言うまでもありません。

タバコが身体によくないことはわかっていても、「もう長年吸っているから、今さらやめても、もう手遅れだろう」と思う人もいるかもしれません。しかし、禁煙をすればその日から、血管壁が傷ついたりニコチンにより血圧が上昇したりといった、血管への悪影響はなくなります。禁煙期間が長くなるほど、動脈硬化の進行を抑えられ、虚血性心疾患のリスクも減らすことができるといえるでしょう。