コラム

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2017年9月12日 動脈硬化の原因は”現代の3つの生活習慣”

生活習慣病という名前が示す通り、動脈硬化を進める高血圧や高血糖などの「悪役」たちは、現代人の生活習慣のそこここに潜んでいます。

動脈硬化の原因①食生活

例えば食生活です。
私は、肥満傾向のある患者さんにはよく、「50年前の食事に近づけてください」と申し上げています。高度経済成長前の日本の食事は野菜や豆類、魚類が中心で、脂っこいものは少なく、量も控えめ。今の時代からすれば”粗食”に思えますが、総エネルギー量を抑えつつ、タンパク質や食物繊維、ビタミンが豊富で、肥満対策には理想的なのです。

時代が進むに従い、日本にも欧米型の食生活が広まってきて、今ではすっかり定着した感があります。脂っこいものや甘いものをたくさん摂るようになったことが、メタボとそれにともなう糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が増加した要因であることは間違いありません。

しかも、その傾向は低年齢化しており、昨今は子どもの肥満も問題になっています。塾通いで夕食はコンビニ弁当ですませ、お腹が空けば甘いお菓子やスナック菓子がいつでも手に入る環境にあるような今の生活スタイルが、メタボの発症を早めていると危惧しています。

動脈硬化の原因②運動不足

運動不足も、生活習慣病を引き起こし、動脈硬化を進める要因です。
交通網が発達し、交通手段が増え便利になったことで、現代人は歩く機会が減っています。家事にしても、電化製品の機能が充実し、ボタン一つですむものも増え、あまり身体を動かさなくなっています。

昔は何をするにも、どこへ行くにも身体を動かさなくては始まらなかったのに、今は意識して「歩こう」とか「運動しよう」と思わなければ、すぐに運動不足に陥ってしまう環境にあるといえるでしょう。

スマホやインターネットゲームの普及により、子どもも外へ出て遊ぶ機会が減っています。食事にも同じことがいえますが、子どものころに定着してしまった生活習慣を、大人になってから変えるのはなかなか難しいものです。外で身体を動かして遊ぶ経験が少ない子どもは、成長してからもインドア志向が強く、運動量が少ない傾向にあると考えられます。

動脈硬化の原因③ストレス

また、現代社会においては、過剰なストレスによる悪影響も見過ごせません。
コンピュータ社会を背景としたいわゆるテクノストレスや、成熟した社会の中での対人ストレス、常に時間に追われることで受けるストレスなど、現代社会はストレスで満ち溢れているといっても過言ではないでしょう。

過剰なストレスは、自律神経を刺激し交感神経を優位にします。自律神経とは、人間が自分の意思ではできない体温調節や血液循環、消化などの身体の機能を調節する神経です。おもに緊張や興奮を司る交感神経と、おもにリラックスや弛緩を司る副交感神経とがあり、全身に張りめぐらされています。

この2種類の神経は、どちらかが強ければいいというものではなく、バランスをとることで身体の各臓器や組織が円滑に働くようにしています。

しかし過剰なストレスを受けると、交感神経が優位に立ち、バランスが崩れてしまいます。その結果、循環器系においては、心拍数や血圧が上昇し、血管が収縮しやすくなります。

つまり、過剰なストレスが長期にわたるほど、心臓や血管への負担が蓄積され、血管壁が傷つきやすくなり、動脈硬化が引き起こされるもとになってしまうのです。

同様に、不規則な生活や寝不足もストレスとなり、動脈硬化のリスクを上げてしまいます

私の診療経験では、一昔前は心臓の病気といえば、ほとんどが高齢者というイメージでした。今でも患者さんのおもな年代は60代以降であることに変わりはありませんが、一方で、以前にはほとんどみられなかった若年での罹患も珍しくなくなっています。30~40代で狭心症や心筋梗塞の治療を受けにこられる方も少なくないのです。

日本は高齢社会ですから、今後もしばらく高齢の患者さんは増え続けると思いますが、かたや若年層の患者さんも増えてきており、心臓の病気になる年代の幅が広がっている印象を受けています。