コラム
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2017年9月1日 当院院長・幡芳樹からのメッセージ
超高齢社会を迎えた日本。医学の進歩を背景に、元気な高齢者が増えている半面、誰しもが何らかの生活習慣病を抱えているといっても過言ではないでしょう。メタボや高血圧、高血糖、コレステロールの異常といった生活習慣病のほかにも、高齢世代は誰でも何かしら、健康不安を抱えているものです。それらの一つひとつは大した症状でなくとも、それらが積もり積もると、血管の劣化をはやめ、ひいては心臓の機能低下につながりかねません。
血管の劣化、心臓の機能低下――「高齢であれば仕方ない」と感じるかもしれません。
しかし実は、血管の劣化は、突然死にも大きく関係しているのです。
現在、日本では年間約10万人もの人が突然死で命を落としており、うち6割は「心疾患」が原因とされています。1日に換算すると約160人が突然死しており、これは実に交通事故死者数の10倍以上の数です。
突然死に至る心疾患の予兆には、主に動悸、胸痛、息切れが挙げられます。しかし、いずれも安静にしていれば5分から10分以内におさまる場合がほとんどのため、「病院に行くほどでもないだろう」と考えがちです。結果、発作が起きたときにはすでに手遅れだったというケースも珍しくありません。
心疾患には「血管の劣化」が深く関係しており、健康な人でも30~40歳からじわじわと進み、突然死のリスクが高まることが明らかになっています。しかも血管の劣化は、自覚症状のないまま進んでいきます。「自分は特に今まで心臓の病気にかかったことがないし、健康だから大丈夫」という思い込みはあてにならないのです。
私は20年以上にわたり循環器内科医として研鑽を積み、これまでに1万人以上の患者さんを診療してきました。開業後は、血管に対してのカテーテル治療のみならず「再発予防」も非常に重要と考え、全国でもまだ珍しい心臓リハビリテーションの専用ルームを併設し、治療を終えた人への運動指導や栄養指導、心理面でのサポートも行ってきました。再発予防に熱心に参加する患者さんも増えて手狭になったため、現在は心臓リハビリテーションクリニックを別に開業するまでになりました。
その経験を踏まえて断言できるのは、自身の体質や家族の病歴としっかり向き合って日々の食事や運動といった生活習慣を見直さなければ、血管の劣化を食い止め、心疾患による突然死を防ぐことは決してできない、ということです。
もし心疾患にかかってしまった場合、心疾患による突然死のリスクを下げるには、「早期発見」「早期治療」「再発予防」に真剣に取り組む必要があります。
早期発見といっても、適切な方法で正確な検査ができなくてはなりません。早期治療もしかり。患者さんの負担が少なく、かつ治療効果の大きい方法が望まれます。
そこで、このコーナーでは、突然死を引き起こす要因となる病気、血管の劣化により心臓が弱っていくメカニズムを解説するとともに、それらを防ぐ方法や医療機関での治療法について、最新の設備を備えた当院での取り組みを交えながらわかりやすく紹介していきます。
心臓は生命の原動力。機能が低下してしまうとやりたいことも思うようにできなくなってしまいます。
心臓に不安のある人はもちろん、血圧や血糖値の異常を指摘されたことがある人、心疾患のある親族がいて自分も心配だという人の役に立てればこれ以上の喜びはありません。