コラム

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2017年9月15日 心筋梗塞になりやすい性格がある?

1950年代に、米国で性格と心筋梗塞のなりやすさに関する調査が行われました。この調査によると、競争心が強く攻撃的で、せっかちな性格の人は、のんびりとした性格の人よりも、狭心症や心筋梗塞を発症するリスクが2倍以上高いとされ、「タイプA」と名付けられました。

タイプAの人はがんばりやで負けず嫌いな傾向が強いとされており、ストレスをためやすく、それが血圧の上昇や心拍数の増加、血流の乱れを招き、虚血性心疾患の発症につながりやすいのではないかと考えられています。

しかし、日本人を対象にした研究では、タイプAでも虚血性心疾患を発症しやすいわけではないといった結果も出ています。この研究ではタイプAの人に喫煙や多量の飲酒が多かったためで、性格という一つだけの要素が発症に関わっているわけではないということがわかったためです。ただし、タイプAの人はそうでない人よりも、より狭心症や心筋梗塞の予防に努めるほうが安心といえるでしょう。

ただ、「タイプAではないから自分は心筋梗塞にならないだろう」というのも早計です。実際に当院で、心筋梗塞を起こしてしまった人に治療後、思い当たることはありませんかと聞くと、前日に長い残業をしたとか、強い疲労感やストレスがあったとか、寝不足だったという声がよく聞かれます。私はタイプ分けされた性格よりも、むしろ、こうした時間に余裕のない生活状況や、負担をためこんだ身体状態のほうが、発症のしやすさに大きく影響するのでは、と実際の診療を通して実感しています。

近年では、タイプDと呼ばれる性格も注目されています。
こちらは後ろ向きな感情が強く、くよくよしがちで、対人関係に不安をもちやすい寡黙なタイプとされています。こちらも虚血性心疾患を起こすリスクが高めといわれています。

家族歴がある人は一層の注意を

メタボは、これまで述べてきた生活習慣を背景に、誰もが発症する可能性があります。

近年、肥満のしやすさに関わる遺伝子の研究が進んでいるものの、先天的な要因である遺伝だけで、体型が決まることはありません。後天的な要因である食事や運動などの生活習慣も、大きく関与しています。

ただし、両親や祖父母の中に、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を患った人がいると、そうした人がいない人よりも同じ病気を起こすリスクが高いことがわかっています。日本では、高コレステロール患者を対象とした研究で、虚血性心疾患の家族歴があると、リスクは約3倍上昇するとの報告があります。

その場合、メタボでなくても動脈硬化には気をつけるべきだと考えます。このコラムで挙げた自覚症状があるときにはもちろんのこと、1年~数年に一度は頸動脈のエコー検査や石灰化スコアなどで、動脈硬化がないかどうかをチェックしておくと安心です。