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2017年10月2日 心臓病とストレスの関係①”ストレス”という言葉の本当の意味

「ストレスは万病のもと」だという事実は、既に皆さんご存じでしょう。
心臓病も例外でなく、ストレスと心臓病の関連を指摘する研究は数多くあります。その内容は、大きなストレスを感じるような出来事が起こると、心臓病を発症する人が増えるというものです。ストレスと狭心症や心筋梗塞、心不全、不整脈、たこつぼ型心筋症などとの関係が指摘されています。

大きなストレスを感じるような出来事とはどのようなものでしょうか。
例えば、震災をはじめとする「災害」が挙げられます。避難所での生活、不意に襲う余震はもちろんのこと、衣食住がままならず危険にさらされ、明日の見通しも立ちにくい中では心穏やかでなく、ストレスがかかることは想像に難くないでしょう。
そう考えると「心臓病を引き起こすストレス=嫌なこと、つらいこと」と思われがちですが、実は、ドイツでのサッカーのワールドカップの期間中に心臓病で搬送される患者数が増えたという報告もあり、必ずしも「嫌なこと、つらいこと」がストレスや心臓病の原因とも限らないことがわかります。

ストレスとはもともと、物理学の用語です。英和辞典でstressという単語をひいてみると「圧力」といった意味が出てきます。つまり物体を押し曲げたり、変形させたりする力のことをストレスと言っていたのです。それが転用され、今では「嫌なこと、つらいこと」くらいの意味になっているようです。

物理学用語だったストレスという言葉を私たちの身体の反応と結びつけたのは、ハンス・セリエというカナダの生理学者です。彼は、外部からの刺激を受けて、それに身体が適応するプロセスを検証しました。そして、外部からの刺激をストレッサーと呼び、私たちにとってストレスを感じさせるものが何なのか、分類・整理しました。そこでは、私たちが一般にイメージする不安や緊張といったもののほかに、暑さや寒さ、薬物もストレッサーとして分類されています。

ここで少し、ストレスという言葉を理解する側に多少の混乱が見られるようになりました。ストレッサーという言葉によって、「圧力」としてのストレスとの違いがあいまいになり、今では、ストレスという言葉は「嫌なこと」(原因)といった意味にも、「嫌なことを受けている」(状態)にも使われるようになりました。「○○がストレス」という言い方がありますし、「ストレスでいっぱいいっぱい」(状態)と言ったりもします。

ストレスをなくしましょう、とはよく聞かれる言葉ですが、実際にはなかなか難しいものです。まったくストレスのない状態を目指すよりも、上手にストレスとつき合えるといいのかもしれません。

次のコラムでは、もう少しストレスと心臓病について、お話しさせていただきたいと思います。