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2017年9月4日 突然死の予兆(2)息切れ、呼吸困難、喘鳴

胸痛のコラムで解説した通り、突然死には予兆があります。
「この程度の症状なら、大丈夫」と決め付けず、症状があらわれた場合はすぐに医療機関に相談してください。

今回は、突然死の予兆として「息切れ、呼吸、喘鳴 (ぜんめい)」の症状について紹介します。

息切れと呼吸困難の症状

激しいスポーツをしたり、日常生活でも思い切り走ったりすれば、誰でも息切れを起こします。
これは、簡単にいえば「身体が酸素不足に陥っている」状態です。呼吸によって体内に取り込まれた酸素量よりも、消費される酸素量が多いために、息苦しくなるのです。

こうした息切れは、休憩をとればすぐにおさまるので心配はありません。

しかし、運動というほどでもなく、少し身体を動かしても息が乱れてしまったり、昔なら難なく上っていた坂道や階段を、休みながらでないと息がもたず上れない、などの症状があったりすると、心臓の機能低下が背景にあるかもしれません。

肺に取り込まれた酸素は血液に溶け込み、心臓のポンプ機能によって全身に運ばれます。心臓が十分に、血液を全身へと送り出すことができなくなると、身体が酸素不足に陥り、特別激しい運動をしているわけではなく、普通に呼吸をしていても、息苦しさや息切れが出やすくなるのです。

これは胸痛にも共通することですが、通勤ルートに駅などの階段があり、毎日上り下りしている人であれば、以前との比較で狭心症のサインに気づきやすいはずです。昨年と同じペースで上れなくなった、といった変化があれば、一度、受診をするのが望ましいのではないかと思います。「もう年だからしかたない」と言う高齢者もいますが、検査をすると、心臓もしくは肺に病気が見つかる場合もあるのです。

重症になると、息切れだけではすまず、呼吸困難を起こし倒れてしまうこともあります。横になっても呼吸が苦しく、椅子に腰かけて前かがみになり、ようやく息ができる状態で救急車を呼ぶというケースが多々みられます。

喘鳴の症状

呼吸が苦しく、かつ、呼吸時にぜいぜいと胸の奥で音がすることもあります。これを「喘鳴」といいます。喘鳴は一般的に、喘息発作の典型症状として知られますが、心臓の病気でも起こります。ただし、起こるメカニズムは喘息とは異なります。

喘息の場合、鼻やのどを通って肺に通じている空気の通り道である気道が炎症を起こし狭まってしまうため、呼吸が苦しくなりゼイゼイと音を立てます。これに対し心臓病の場合は、心臓のポンプ機能が不十分なために、肺に水がたまることで肺での酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなり、息苦しくゼイゼイとなるのです。心臓のポンプ機能が低下する状態を「心不全」といい、喘鳴は心不全の代表的な症状です。

なお、心臓のポンプ機能や【心不全】の診断には心臓超音波検査がもっとも有効です。

息切れ、呼吸困難、喘鳴の症状について解説しました。
特に息切れは、「体力がなくなっただけ」と思いこみがちです。
突然死の予兆のひとつとして、知っておいていただきたいと思います。