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2017年9月5日 突然死の予兆(3)動悸、不整脈

胸痛のコラムで解説した通り、突然死には予兆があります。
症状があらわれた場合は医療機関に相談することが重要です。

今回は、突然死の予兆として「動悸、不整脈」の症状について紹介します。

動悸と不整脈の症状

思い切り身体を動かした後に、ドクドクと心臓の高鳴りを感じたり、人前であがったり、心配事があったりすると、ドキドキと拍動を強く感じたりと、普段の生活の中でも心臓の拍動を意識する場面はあるものです。
このようなときに、不快に感じる拍動を総称して「動悸」といいます。
代表的な症状としては「胸がドキドキする」「心臓がバクバクする」「口から心臓が飛び出しそうだ」などで、脈が速くなっていたり(=頻脈)、遅くなっていたり(=徐脈)、乱れていたりする状態になっていることが強く疑われる状態です。

動悸は、健康な人でも一時的な緊張などで起こる、そう珍しくない症状です。
実は動悸の多くは心臓病には直接関係がなく心配ないものが多いことも事実です。

心臓は血液を送り出すために、安静時で1分間におよそ60~80回、規則的な収縮と弛緩を繰り返していますが、運動したときや緊張・興奮したときなど、身体全体の需要に応じて心臓がたくさん血液を送り出さなければならなくなると、必然的に脈拍数が増えます。

これらの動悸は、原因を取り除くことで解消します。

動悸が起こったらまずは安静にして、自分で脈をとってみましょう。乱れや、徐脈、頻脈がないようであれば、動悸が起こってくる原因を考え、取り除いてみてください。
脈に乱れがある場合、徐脈や頻脈がある場合、思い当たる原因がない場合や、原因を取り除いても動悸の症状が長く続くようなら、病的な動悸(心臓以外に原因があることもあります)の可能性もありますので受診をすすめます。

動悸を引き起こす病気

動悸を引き起こす病気には、心臓病のほか、高血圧や貧血、甲状腺ホルモン疾患などが挙げられます。
動悸に加え、胸痛や息苦しさ、むくみを感じたら、心臓の病気が疑われます。

一方、「胸がドキッとする」とか「脈が飛ぶ」などとあらわされる場合は、どちらかというと動悸とはいわず、「期外収縮」という不整脈に典型的な症状です。
心臓が定期的に拍動している中で、たまに出る「しゃっくり」のような脈の乱れです。
また、期外収縮はストレスによる不安感や睡眠不足、食欲不振といった心因性のものが引き金となり起こることもあります。
私自身も開業時、やるべきことや考えるべきことが山積みとなった時期に、何度か期外収縮を経験しましたので、同様の症状で受診される方の気持ちがよくわかります。
一時的に過度なストレスがかかったためと思われますが、置かれた状況を考えるとなかなかストレスの解消は難しく、辛い思いをしました。

なお、極端な偏食やダイエット、コーヒーなどのカフェインを含んだ飲み物やアルコールの摂取といった食習慣も、期外収縮の原因になることがあります。

不整脈は健康な人にも起こる症状

健康診断などで不整脈を指摘され、当院を受診する人もたくさんいます。
心臓の拍動は脈と連動していますから、脈に乱れがあると心臓の機能低下が疑われるわけです。
しかし、実は不整脈自体は、健康な人でも日常的に起こっており、それだけで心臓の病気と心配する必要はありません。
「1日の中で不整脈がまったく出ない人はいない」といわれているほど、ありふれたものなのです。
健診で不整脈でひっかかったときには、不整脈を治すためではなく、不整脈の背景に心臓の病気がないかどうかを確かめます。多くの場合、いい心臓であることが確認できれば、不整脈そのものは放置しておいていいことが多いのです。

たとえ不整脈があったとしても、循環器科で心臓の状態を診た結果、問題がなければ、特に治療の必要はありません(ただし、心臓の状態に問題がなくても、心電図の異常によって突然死が起こる可能性がある人がわかる場合がありますので、そういった特殊な例を除きます)。

一般論として、心臓の超音波検査を行い、心臓の肥大や構造の異常がなく、動いているべき場所が動いていないといった運動の異常がなければ、問題はありません。
当院では必要に応じて、運動負荷試験といい、患者さんに運動していただいて心臓に負荷をかけたときの脈を調べる検査を行います。
それで不整脈が増える傾向にあると、心臓が苦しんでいるときの症状として不整脈が出現している可能性があります。心臓の病気を起こすリスクがあり、運動制限や薬物療法が必要な場合もあります。
逆に、負荷をかけると不整脈が出なくなることのほうがほとんどです。
この場合は心臓病のリスクは低いといえます。

突然死の前触れとしての不整脈

ただし、先ほどの動悸と同様、不整脈の原因として心臓の機能低下が疑われる症状のある人は、注意しなければなりません。
めまいや立ちくらみ、意識が遠のくことがある、身体を動かしているときに突然「ドキドキッ」と不快な拍動があり、一瞬、心臓が止まるかのように感じるなどは、突然死の前触れの恐れがあるので、早い受診が望まれます。

特に、ドキドキ感が強い場合は「頻脈(ひんみゃく)」といって、脈が非常に速くなっていることが考えられます。
多くの場合は心臓のポンプ(心室)由来の不整脈ではなく、貯蔵庫(上室)で生じている頻脈ですが、中にはポンプが小刻みに震える「心室頻拍」の可能性もあります。
心室頻拍は、血液がスムーズに流れなくなり命に関わる病気です。心室頻拍を何かで指摘された場合には精密検査と何らかの治療が必要になります。