コラム

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2017年9月2日 突然死を引き起こす、心臓と血管のしくみ

突然死の原因にはさまざまな病気がありますが、心臓が原因で起こる「心臓突然死」が約6割を占めているといわれています。日本では年間約10万人が突然死で命を落としており、このうち実に約6万人が心臓突然死なのです。1日約160人もの人が心臓突然死で亡くなっていることになります。

「突然亡くなる」という意味では交通事故死もありますが、こちらは年間4000人程度。つまり、交通事故で亡くなる人よりも、心臓突然死で亡くなる人のほうが10倍以上も多いのです。

心臓の構造や働きについては他のコラムで触れますが、心臓がダメージを受ければすなわち命に関わることは、誰でも想像がつくと思います。突然死では心臓がなんらかの病気で致命的なダメージを受け、機能が止まり、即死してしまいます。

もともと心臓に病気があるとわかっている人なら、その可能性は予測できるでしょう。しかし実際には、前もって心臓に病気があるとはわかっていない人が突然亡くなってしまうケースも珍しくありません。

突然死の原因として心臓突然死の次に多いのは、血管の病気です。脳の血管が詰まる脳梗塞や、肺を栄養する 血管が詰まる肺塞栓症(エコノミークラス症候群もその一つです)、大動脈という生命維持にとって非常に重要な太い動脈が破裂する大動脈破裂、大動脈解離といった病気が挙げられます。これらが突然死の3割近くを占めるとされており、突然死のほとんどは、心臓か血管の病気が原因であるといえます。

心臓の「ポンプ機能」とは

まったく難のない健康そのものの心臓が、外傷もないのに死に至るほどの状態に急変するとはまず考えられません。心臓の機能が知らず知らずのうちに弱っており、それがあるとき致命的な状況を引き起こすと考えるほうが妥当です。

では、そもそも「強い心臓」「弱い心臓」とはどんな状態を指すのでしょうか。

心臓は、全身に血液をめぐらせる機能をもっています。いわゆる「ポンプ機能」です。血液は実に1分でひとめぐりという速いペースで身体をめぐっており、全身の細胞に酸素や栄養を届け、不要物を回収し再び心臓に戻ってきます。その一連の流れをつくっているのが心臓のポンプ機能なのです。身体の中では、ふくらはぎの筋肉も静脈に圧をかけて心臓に戻すポンプ機能を担っているといわれますが、筋肉がそのために自発的に動くわけではありません。唯一、心臓だけが、自ら動いてポンプの役割を果たしているのです。

このポンプ機能が低下している状態が「心臓が弱っている」状態です。心臓が弱ると血液がスムーズに流れなくなったり、逆流してしまったり、途絶えたりしてしまいます。

心臓を弱らせる「血管の劣化」

では、どんな要因でポンプ機能が低下し、心臓が弱ってしまうのでしょうか。

先天的な病気で心臓の構造に問題がある場合を除き、実は、心臓の弱りの多くは悪い生活習慣による「血管の劣化」で起こるとされています。いわゆる動脈硬化です。心臓は血液を全身に送り出すため、1日に約10万回も収縮をしています。そして心臓自身も、動くためには血液から酸素や栄養を取り込む必要があります。それを供給しているおもな血管が「冠動脈」という心臓をとりまく動脈です。

ここに動脈硬化が起こると、心臓に必要な酸素や栄養がうまく届けられなくなるので、心臓がいわば”エネルギー不足”となり、機能が低下してしまうのです。血管は加齢により自然な老化も進みますが、それに拍車をかけるのが、偏った食生活や運動不足、喫煙といった悪い生活習慣の積み重ねです。これらが血管の劣化=動脈硬化を進める要因となるのです。