コラム

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2017年12月1日 油断は禁物。心筋への血流不足で起こる「狭心症」

冠動脈の血管が動脈硬化などにより狭まると、血液が十分に流れなくなります。これを「心筋虚血」といいます。

血流が少なくなれば、心筋が動くために必要な酸素や栄養の供給が十分にできなくなります。これを「狭心症」といいます。心筋が急な酸素不足に陥るために、胸痛や胸部の圧迫感、息苦しさといった発作があらわれるのです。

通常、狭心症の発作は数十秒から数分、長くても15分以内におさまるとされています。発作中は苦しいのですが、おさまると多くの場合、何事もなかったようにケロッとしてしまうのが特徴です。

狭心症を原因別で分けると、大きく「労作性狭心症」と「冠攣縮(れんしゅく)性狭心症(または安静狭心症)」の2種類があります。それぞれについて解説します。

労作性狭心症とは

労作性狭心症は、「血管を狭め、詰まらせる動脈硬化のおそろしさ」で話した動脈硬化を背景として、身体に無理がかかるような動作をしたときや、急な寒さにさらされるなどの環境の変化、緊張や不安といったストレスなど、なんらかのきっかけがあって起こる狭心症です。

労作性狭心症はさらに、症状の出方によって、「安定型狭心症」と「不安定狭心症」に分けられます。

症状の出方が一定の「安定型狭心症」

安定型狭心症は、症状の出方が一定である狭心症、といえます。急に走る、重い物を持つなど、症状が出るきっかけがいつも同じだったり、痛みの程度や持続時間も同じだったりで、本人も「ああ、いつものか」と思うような発作である場合は、安定型狭心症と考えられます。

「いつもの」と思うということは、その人には「この程度動くと発作が起こる」目安がだいたいわかっていることを意味します。動作をしたときに血圧と脈拍が上がり、その人にとっての一定のラインを超えると決まって起こる、というのが特徴です。

なお、男性のほうが女性よりも若いうちからなりやすいことがわかっており、その差は10歳程度ともいわれています。女性は女性ホルモンで守られているといわれていますが、閉経したタイミングでなる可能性もありますので、自分は大丈夫だからパートナーも問題ないはずとは思わずに、注意を促してあげてください。

安定とはいえ、毎日のように発作を起こす人もいれば、年に数回、という人もいて、症状の強さにも個人差があります。頻度が少なく、発作時間も短ければ、たまたま調子が悪かっただけなどと、病気として認識されずにやりすごされることも少なくありません。

突然死のサイン「不安定狭心症」

しかし安定型狭心症を自己判断で放っておくと、次第に発作の回数が増えたり、発作の時間が長くなったりする恐れがあります。また、きっかけがなく、安静にしているときにも発作が起こるようになったりします。これらを「不安定狭心症」といいます。

不安定狭心症は、後に述べる心筋梗塞に限りなく近づいている状態で、突然死の危険を知らせるサインでもあります。不安定狭心症になったら、一刻も早い治療が望まれます。安定型狭心症から不安定狭心症への移行のしかたも人によって違い、ずっと安定型狭心症の人もいれば、あっという間に不安定狭心症へ移行してしまう人もいます。だからこそ、安定型狭心症でそれほど発作の回数もなく、症状も深刻ではないとしても、自己判断で「無理をしなければ大丈夫」とそのままにしていることは危険なのです。

大切なのは、発作が起こるもとになっている、冠動脈の動脈硬化の状態を知ることです。同じ安定型狭心症でも、動脈が今にも詰まりそうなほど狭まっているのか、それほどでもないのかには個人差があり、必ずしも、今は症状の出方が安定しているからといって動脈が深刻な状態ではない、とは限らないからです。初めて発作を起こした人は、たとえ症状が軽微であっても一度循環器科を受診し、自分の動脈の状態を知っておくことが望ましいと考えます。なお、糖尿病の方や高齢者は症状が出にくいので、特に気をつけてください。

すでに安定型狭心症と診断され、治療や経過観察中であっても、「いつもと違う」発作が起こったときにはすぐに、かかっている医療機関を受診しましょう。

血管攣縮性狭心症とは

一方、血管攣縮性狭心症は、動脈硬化が原因ではなく、もともと動脈が痙攣(けいれん)しやすい性質のために、予期せず狭まって起こる狭心症です。就寝中でも、安静にしていても起こりうるので安静狭心症とも呼ばれます。特にこれといった発症のきっかけがなく、起こり方も一定ではないため、労作性狭心症よりも発見が難しいとされています。喫煙や過度のストレスにより症状が悪化しやすいことがわかっています。

冠攣縮性狭心症(安静狭心症)

以上のように、狭心症は「労作性狭心症」と「冠攣縮性狭心症(または安静狭心症)」に分けられます。
特に「労作性狭心症」のひとつである「不安定狭心症」は、突然死のサインです。
症状が軽くても、必ず循環器科を受診するようにしてください。