コラム

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2017年11月1日 突然死の主要因「虚血性心疾患」とは

全身の細胞は、心臓が送り出した血液から酸素や栄養を受け取って生きていますが、心臓自体も、動くためには酸素や栄養が必要です。

心臓にエネルギー源を送る役目は、「冠状動脈(冠動脈)」と呼ばれる太い動脈が担っています。心筋の表面を包むようにして走っており、冠のようにも見えることから、こう名付けられています。

冠動脈には、「左冠動脈」と「右冠動脈」の 2 本の主要動脈があります。さらに、左冠動脈主幹部は「左前下行枝」と「左回旋枝」という 2 本の枝に分かれています。これらは枝分かれをしながら心筋の表面に張りめぐらされ、細い血管は心臓の内側にも伸びています。心臓はいうまでもなく人間の生命線ですが、心臓自体の生命線はこれらの冠動脈といえるでしょう。

その冠動脈が狭くなったり詰まったりして、血流が滞るために起こるのが虚血性心疾患です。心筋が動くために必要な酸素や栄養が不足してしまうので、詰まった先の心筋の細胞が弱ったり、壊死したりしてしまいます。そのため心臓の機能が低下してしまうのです。

虚血性心疾患は、大きく分けて、冠動脈が狭まり、血流が悪くなるために起こる「狭心症」と、完全に詰まって血流が途絶える「心筋梗塞」の2つがあります。狭心症は心筋梗塞の前段階ともいえますが、狭心症の既往がなく、突然、心筋梗塞を発症するケースも少なくありません。

冠動脈の中でも太い主要動脈が詰まると、心臓を栄養している広範な部分に血液が回らなくなってしまいます。血流が完全に途絶えると、短時間のうちに心筋が広範囲で壊死し、心臓停止すなわち突然死に至るのです。

厚生労働省発表の「平成25年 人口動態統計(確定数)の概況」によると、心臓病は死因別死亡数全体の15%強を占めており、がんに次いで第2位となっています。ただし、がんは身体のさまざまな場所、組織に発症するものの総数なので、単独の臓器に起こる病気としては、心臓病が第1位といえます。そして、死に至る心臓病の大多数が虚血性心疾患なのです。