コラム
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2017年9月17日 心筋梗塞の発症リスクを予測する”石灰化スコア”とは
狭心症や心筋梗塞が強く疑われる場合は、心臓CTと石灰化スコアの検査を行うことがあります。
本コラムでは、石灰化スコアについて解説します。心臓CTについては、こちらのコラムで解説しています。
石灰化スコアとは
動脈硬化が起こった血管の内壁には、カルシウムが沈着しやすくなります。これを石灰化といい、心筋梗塞の発症リスクを予測する一つの要素となります。石灰化の場所が多いほど、動脈硬化の場所も多く、心筋梗塞を起こすリスクも高くなるというわけです。
石灰化は、CTを使って映し出すことができます。画像をより見やすくするための薬である 造影剤を使わず、数秒程度の撮影で調べられため、被曝量が少なくてすみます。検査で得られた石灰化の量や面積を計算し、スコア化したものを「石灰化スコア」といいます。
米国の研究で、狭心症や心筋梗塞を起こしたことがない人を対象に検査をして石灰化スコアを出し、その後の死亡率との関連を調べたところ、石灰化スコアが0の人ではその後5年間の死亡率は0.1%、400の人では2.8%と、大きな開きがあることがわかりました。この研究では死因は不問ですが、動脈硬化の進行度合いが5年死亡率に関係するのではないかと推察されます。
また、日本人の死亡原因の第2位である心臓病の多くは、心臓の血管の動脈硬化が進み、血管がつまることで起こります。急性心筋梗塞のうち、3人に1人は全く前兆なしに起こりますが、近年、石灰化スコアで心筋梗塞を予測できることが分かってきました。石灰化が血管にあることが異常であり、多いほど将来の心筋梗塞を発症するリスクが増加するのです。
一般的に、男性は50歳ごろ、女性は60歳ごろから次第に石灰化が増えるといわれています。実際には、このスコアに高血圧や糖尿病、脂質異常などの生活習慣病や喫煙といった、動脈硬化のほかの危険因子も加味して、心筋梗塞の発症リスクを予測します。たとえ石灰化スコアが低くても、こうした要因があればリスクは当然上がります。必要に応じて、動脈硬化を進ませないようにする治療が検討されます。
一度できてしまった石灰化は、治療などでなくすことは困難です。つまり検査で石灰化が見つかった場合は、これ以上増やさないことが目標となるのです。そのためには生活習慣病を改善し、動脈硬化の進行を抑えることが大切です。
なお、糖尿病の人でも石灰化スコアが0であれば、糖尿病のない人と同じで心筋梗塞の発症リスクが極めて低いことがわかっています。「糖尿病だから心筋梗塞が起こるかもしれない」と不安を抱いている方は、一度検査してみることをおすすめします。
また、当院では石灰化スコアを調べるときに合わせて内臓脂肪も調べ、心筋梗塞のリスクを予測する心臓ドックとしてご用意しています。その結果を踏まえて、長期的な視点で適切な治療を行っています。一度、あなたの心筋梗塞発症リスクを調べてみませんか?