コラム

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2018年2月2日 虚血性心疾患以外の心疾患―心室細動、心房細動

「突然死の主要因「虚血性心疾患」とは」で解説した虚血性心疾患以外にも、命を脅かす心臓の病気があります。

先のコラム
で解説した弁膜症、心筋炎、心膜炎に加え、心室細動と心房細動についてご紹介します。

心室細動と心房細動の違い

「細動」とは、一定のリズムで動いていた心臓のポンプが、まるで痙攣のように不規則かつ小刻みに震えてしまい、ポンプの役割を果たせなくなる状態を指します。

正常な心臓では、洞結節(どうけっせつ)という場所から一定のリズムで電気信号が心房→心室へと送られ、規則的に収縮します。ところがなんらかの異常が起こると、洞結節以外でイレギュラーな電気信号が発生してしまうのです。そのため心臓内で信号に乱れが生じ、正常な収縮ができず細かく震えてしまうことがあります。これが心室で起こると心室細動となり、心房で起こると心房細動になります。

図20 正常な心臓

心房と心室は、ともに血液を送り出すポンプ機能を担いますが、このうちメインのポンプは心室で、心房は補助ポンプの位置づけです。心室細動が起こると、メインのポンプが機能しなくなるために、ただちに救命措置を行わないと心停止、すなわち突然死に直結します。


図表21 心室細動の心臓と心電図イメージ

心室細動の要因

近年、駅などの公共施設や人が集まるホールなどにAED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)の設置が進んでいます。これは心室細動を起こした人に用い、電気ショックを与えて心臓の状態を正常に戻す機器です。心室細動を起こすと数分で死に至るため、救急車の到着を待っていては間に合いませんが、その場にいる人がすぐAEDを作動させれば、助かる可能性が高くなります。

心室細動の要因には、心筋梗塞や心不全などの心臓病や、心電図に心室細動を起こしやすい波形があらわれるブルガダ症候群等という遺伝的な素因などが挙げられます。また、野球やゴルフなどの硬いボールが突然胸に当たったり、格闘技などで床にたたきつけられたりなどの強い衝撃で起こる場合もあります。

図表22 心室頻拍の心臓と心電図イメージ
心室細動の手前の段階として「心室頻拍(しんしつひんぱく)」という状態があります。これは左右いずれかの心室の、筋肉の一部に異常が起こり、拍動を起こすための電気がその場でぐるぐるとまわることで起こります。また、本来電気信号が発しない場から新たな電気信号が発せられ、速いリズムで信号が送られるために起こることもあります。リズムはほぼ一定なものの、1分間に130回以上にも及ぶ速い拍動を起こし、心室細動に移行することもある、非常に危険な状態です。

心房細動の要因

一方、心房細動は、イレギュラーな電気信号が心房内で発生し、心房が細かく震える状態です。本来は心房から心室へスムーズに血液が送られるべきところ、心房のポンプ機能が低下してしまうために血液が心房内にたまってしまいます。

おもな自覚症状には動悸、めまい、ふらつきなどがありますが、初期のうちは無症状またはすぐおさまることが多く、「年のせい」「疲れのせい」などと見過ごしやすいのが問題です。心房細動の起こった心房内には、滞った血液が血栓をつくることも多く、それが動脈を詰まらせ、脳梗塞などの命を脅かす病気の原因になりかねません。

心房細動は高齢になるほど多く、弁膜症などの心臓病や動脈硬化、高血圧があると起こりやすいことや、ストレスや過労、アルコールが誘発要因になることがわかっています。

図表23 心房細動の心臓と心電図イメージ

以上、2本に分けて、虚血性心疾患以外の心疾患について解説しました。
それぞれの特徴について知っておきましょう。